COMIT 北九州コミットの会

福岡県重症神経難病ネットワークにおけるコミュニケーション支援について

福岡県重症神経難病ネットワーク
難病医療専門員 上三垣 かずえ

1 重症神経難病ネットワークとは

 国の難病対策として、神経系難病で療養されている患者さまのための身近な入院施設の確保等を図るため、 重症神経難病患者入院施設確保事業が開始され、各自治体に難病医療連絡協議会を設置し、難病医療拠点病院を指定、そこへ難病医療専門員を派遣し、入転院などに関する相談機関として設立さ れたものです。
 福岡県は拠点病院を九州大学病院、準拠点病院を産業医科大学病院とし、それぞれに看護師資格を持った難病医療専門員が、難病医療連絡協議会の業務(医療機関との連絡調整、各種相談応需、拠点・協力病院への入院要請、研修会開催)を受託するとともに、連絡窓口を設置し、高度の医療を必要と する患者さまの受け入れ等の機能を担っています。
 現在、基幹協力病院15施設、一般協力病院・診療所108施設にご協力をいただき、業務を行っています。
 対象疾患は神経系難病30疾患です。
 対象疾患・連絡先などの詳細は、別紙(ネットワークパンフレット)をご参照ください。

2 神経難病患者さまへのコミュニケーション支援

 福岡県重症神経難病ネットワークでは、機器の貸与や技術面での独自の支援は実施していませんが、それ以前のコミュニケーション支援の導入までの過程をお手伝いしています。

意思伝達ができなくなること・・

 神経難病は原因不明の進行性の疾患で、特に筋委縮性側索硬化症は、運動神経が関わる機能は全て失われていくため、運動、コミュニケーション、嚥下、呼吸等の重要な機能が侵され、ADL(日常生活動作能力)の著しい障害、QOL(生命生活の質)の低下をきたします。生命の維持には、胃瘻栄養、コミュニケーション装置、人工呼吸器の3つの生命維持装置が必要です。コミュニケーションは、即、命には係わらないため軽視されがちですが、ご自分の意思を伝える大切な手段です。最終的には脳波レベルで YES・NO を伝えるしかない状態が訪れます。しかしながら、意思伝達ができなくなることがどんなに大変なことなのかなかなか理解してもらえないのが現状です。

コミュニケーション支援に繋がるまで・・・

 ご自分の生き方の選択をしていただくために、ほとんどの方に予後の告知がなされます。その際、早めのコミュニケーション手段の習得を促すのですが、「認めたくない現実を突き付ける、ひどい医療者」と認識されることも珍しくなく、介入のタイミングに苦慮している現状があります。折につけ患者さまやご家族にお会いし、説明を繰り返すしかありません。

3 外部機関への支援要請

 受け入れができたら、早々に専門機関に支援をお願いしています。
政令都市(福岡市、北九州市)
 各市障害福祉センターに依頼。給付意見書の作成のための訪問評価から、本人家族のニーズを把握し たうえでの申請の援助、及び、機種の選択、フィッテング、スイッチの変更などの継続的な対応まで実施していただいています。
その他の地域
 そういった専門機関が無く、保健師や業者及び県の NPO団体と連携し、支援を行っていますが、十分な支援ができていないのが現状です。支援が不十分なことから、せっかくコミュニケーション機器が手元にあっても使えず、QOLの低下につながっている方も多く、現在の懸案事項です。

福岡県重症神経難病ネットワーク チラシ(PDF)
福岡県重症神経難病ネットワーク チラシ(テキスト)