視覚障害者へのタブレット端末インストラクター養成講座
10月2日講座カリキュラム
講義 指導者の心構え
- 10月2日(日)10時〜12時
- 担当 氏間 和仁 広島大学大学院教育学研究科 準教授
- 1 使うことができることと使い方を教えられることとは違うことの認識
- (1)日本人であるからといって,みなが国語教師を勤められるわけではない。
- (2)視覚障害があるからといって,みなが視覚障害者の教師を務められるわけではない。
- (3)TPACKという考え方
- 2 初心者に教えるときに陥りやすいこと
- (1)伝えすぎ症候群
- (2)受講者の特徴の把握,ニーズの把握
- (3)オーダーメイド精神
- 3 何を教えて何を教えないのか
- (1)ニーズへの近道を探る
- (2)必要最小限のことから確実に
- (3)一人でできることを一つずつ
- (4)身近な言葉から少しずつ
- (5)うまくいかないときこそ,指導者の腕の見せ所
- 4 生活の中で活用することの意味
- パソコンとの最大の違いは,身につけているところ。いつも身につけられる,一般的な端末だからこそ,今まで享受できなかった情報を得られる可能性があります。携帯電話ではない,パソコンでもない,スマートフォンだからこその長所を存分に楽しんでもらいましょう。
教える内容(CK)
教え方(PK)
用いる教材(TK)
とにかく,全ての方法を伝えたがる。
とにかく,事細かく伝えたがる。
とにかく,詰め込んで伝えたがる。
とにかく,カタカナだらけで伝えたがる。
視覚障害者は,一目瞭然,百聞不如一見(百聞は一見にしかず)が成り立たないことを再確認
経験値の幅も多用であることを再確認
・押すと言っても,ぎゅーっと押すのか?,ポチッとおすのか?
運動能力にも個人差が大きいことを再確認
・見えているからフリックがしやすいことを認識しよう。
・ダブルタップの2回目が同じ場所に降りるとは限らない。
・かえって,片手操作の方が安定することも。
教育学で学習の準備性のことを「レディネス」といいます。レディネスを捉えて,レディネスに沿って,指導することが必要です。
相手のニーズを把握し,最も効率的な操作方法を熟慮して,相手の運動能力に応じた操作方法で提案すること。
パソコンとの最大の違いは,運動能力に操作性が大きく依存すること。
ニーズを達成するのに最も,利用者にとって,効率的な方法を熟考する。指導者が近道と感じる操作方法が,必ずしも利用者の近道とは限らない。
さしあたり,電話がとれるとか,時間が分かるとか,ただし,確実にできるように。
一人でできること,一人でできないことの重なり部分を「最近接発達の領域」といいます。教育ではここに働きかけることが効果的とされています。一人でできることを把握し,指導者と一緒にできることを,講習では取り扱い,徐々に一人でできることへと変化させていきます。
用語が悪いわけではない,ただ,どっとおしよせると,教わる方は萎縮してしまう。
身近な言葉で言い換えられる言葉は言い換えて,少しずつ,用語に変換していく。
なぜ再現性が低いのか,原因をつきとめる。
原因が分からない場合は,いくつかの方法で試してみる。
決して,原因を利用者に求めない。
結果,解決できなくても,次につながる,終わり方をする。
実技 voiceoverを使ったiPhone、iPadの基本的操作の指導法 その1
- 10月2日(日)13時〜16時
- 担当 氏間 和仁 広島大学大学院教育学研究科 準教授
- 1 ボタンなど本体構造
- いい指導者は,手を出さなくて,口だけで,分からせられる!
- 触察で理解させる極意:能動的に,連続的に,上下左右を揃えて,触らせる。
- 2 ジェスチャー
- VoiceOverの操作練習でレディネスを捉えよ!
- 画面操作の前に,机の上や,自分の手の上,指導者の手の上で練習させるのも効果的
- 指導者が利用者の手の上でしてみせるのも効果的
- やたらと「タップ」と言わせてしまう場合は,ダイレクト操作から!
- ダブルタップの前に「タップ」と言わせてしまう場合は,スプリットタップから!
- フリックの前に「タップ」と言わせてしまう場合は,ダイレクト操作から!
- ※基本,フリック操作は画面を見ることができない人にとっては,画面上の要素を取りこぼさない点で,重要な操作です。しかし,ダイレクト操作も効率を上げる点で重要です。どちらが先かはさほど重要ではないと思われます。
- 3 基本設定
- VoiceOverは必ず,ショートカットに設定を!
- VoiceOverのオン,オフの方法を習得させる。
- ホームボタンの間隔を大きくする。
- 利用者の言葉で,オン,オフの方法を説明できるようにさせる。
- ローターに,読み上げ速度を追加しよう。
- 4 画面構造を伝える指導方法
- 行列の言葉が理解できそうであれば,それを利用しよう!
- それが難しい場合は点図の利用も!
- 机の上で,手の動きで伝えることもあり!
- 5 ジェスチャーの理解を促す指導方法
- まずは,ダブルタップ,左右フリックから!
- パソコンを扱っている人には,右フリックがタブキー,左フリックがシフト+タブキー,ダブルタップがエンターで伝わる!
- 様子を見ながら,ジェスチャーを増やしていく!
- 6 様々な文字入力のやり方とその指導方法
- (1)音声入力も優秀です!
- (2)標準,タッチ,ダイレクトタッチ入力モード
○標準入力モード(両手が基本)
左右にフリックしてキーボードのキーを選択してから,ダブルタップして文字を入力します。または,指をキーボードの中で動かしてキーを選択し,スプリットタップします。
キーを選択すると VoiceOver からキーが読み上げられ、文字を入力するときにもう一度読み上げられます。
両手操作が普通の人,スプリットタップやダブルタップが安定している人に向いています。
○タッチ入力モード(片手で可能)
キーボードのキーにタッチして選択し、指を離して文字を入力します。間違ったキーをタッチした場合は、使用したいキーに指をスライドさせます。
キーをタッチすると、VoiceOver からそれぞれのキーの文字が読み上げられます。指を離すと、VoiceOver は文字を入力します。
片手での操作が普通の人。
改行やバックスペースなどの機能キーの操作は,ダブルタップやスプリットタップを行う必要があります。指を挙げた時に文字が切り替わったり,入力されるので,速いという人もいるし,なじまないという人もいます。
○ダイレクトタッチ入力モード(片手で可能)
VoiceOver がオフの場合と同じように入力します。
改行やバックスペースなどの機能キーの操作は,ダブルタップやスプリットタップを行う必要があります。押したときに文字を選択したり,入力したりするので,従来の感覚に近い。
先々の問題として,文字の編集の際,カーソルの位置関係を理解することも重要。