知的・発達障害のある人たちの中には、自分の気持ちや欲求を上手く伝えることや
自分の置かれている状況、身の回りのことや作業をどのように行っていけば良いのかを理解することが難しい人たちがいます。このような場合、分かりやすく伝えることが、必要不可欠な支援となります。
「視覚支援」、「構造化」という言葉を耳にしたことがありますでしょうか?
初めて聞いた時、何か難しいそうだなと思われた方もいるかもしれません。
「視覚支援」、「構造化」とは、知的・発達障害がある方に、分かりやすく伝える方法の一つで、伝える・伝えたい情報を写真や絵を使い視覚情報に代替する支援方法です。
障害のある子どもたちを対象にした療育や教育では、広く活用されるようになってきましたが、障害福祉事業所において導入しているところもありますが、療育や教育に比べると活用されているとは言えないのではないでしょうか。
北九州市障害児・者のIT・コミュニケーションを考える会(以下北九州市コミットの会と略す)事務局では、「取り組んでみようと思うけど、個々に応じてどのように導入していけばいいのか分からない」「取り組んでみたけれど、上手くいかなかった」、また、「聞いたことはあるが、実際にどのように使うのか、どのような効果があるのか知りたい」という事業所があるのではないかと考えました。
そこで、講義形式の研修会ではなく、「明日から使えるツールを作ろう」と題したワークショップ形式の研修会を2019年度に企画、開催しました。
今回のワークショップは、北九州市内にある障害福祉サービス事業所(児童発達支援、放課後等デイサービス、就労継続支援A型、就労継続支援B型、生活介護)の職員を対象にし、12の事業所が参加しました。
ワークショップは、全3日間で、次のような内容で行いました。
ツール作成にあたり、「ツールを導入していく上で必要なこと」をテーマに、桑の実工房の桑園さんからお話しをしてもらいました。
講義を聴いた後、4つのグループに別れ、「対象者の実態把握(アセスメント)の視点」「どのような場面に、どのような視覚支援ツールを使用するのか」「効果的なツールとは」などを意見交換しながら、作成するツールを考えていきました。
各グループには、実際に視覚支援を活用している障害福祉事業所の方々にファシリテーターとなってもらい、各グループを引っ張ってもらいました。
今回、ご協力頂いた方は、いろは(放課後等デイサービス・生活介護)の松元さん、桑の実工房(生活介護・就労継続支援B型)の仲本さん、こらぼっくる(放課後等デイサービス・就労継続支援A型)の九十九さん、さんぽ(放課後等デイサービス・生活介護)の高村さんです。
ワークショップ1日目で考案したツールを実際に作成していきました。
ファシリテーターからは、「どのようにしたら分かりやすいツールになるのか」「効率的に作成する方法」などについて助言を受けながら作成しました。
日々の業務がある中で、必要なツールを作っていくためには、効率的な作成方法を知っておくことはポイントとなります。作成したツールは、ワークショップ3日目までに、自分の事業所で実際に使ってみて、ツールの効果などを評価しておいてもらいました。また、作成したツールに修正点があれば、ツールを作成してもらい、再度使って評価をしておいてもらいました。
このセッションは、ワークショップ参加者に加え、公開講座とし、市内の障害福祉事業所、特別支援学校からの参加がありました。
各事業所が作成したツールとツールを使用した時の様子などをワークショップ参加者に説明してもらった動画を事前に撮影したものを使用し、各事業所から報告してもらいました。
どの事業所も、ツールを使うことで、対象者に分かりやすく伝えたり、対象者が伝えることができたりなど、これまで見られなかった行動につながるなどの報告がありました。
各事業所の報告を受けて、桑の実工房の桑園さんから「視覚情報を活用したコミュニケーションツールの有効性と導入・活用する上で気を付けておきたいこと」をテーマにまとめの講義を聴きました。
7ヶ月間にわたる取り組みでしたが、参加者だけでなく、企画した北九州市コミットの会会員、ご協力頂きましたファシリテーターにとっても有意義なものになりました。
北九州市コミットの会では、IT支援、コミュニケーション支援に関する研修会を今後も開催していきたいと考えておりますので、よろしくお願い致します。
なお、今回ワークショップで使用された動画(承諾が得られた事業所のみ)、研修資料は、北九州市コミットの会のHPからご覧に頂けますので、ご活用頂ければ幸いです。
今回の事業は、「北九州小文字ライオンズクラブ」から助成を受け、運営費の一部にさせて頂きました。